【犬と家族の物語】保護犬と共に「良い経験を上書き保存」~保護犬の迎え入れから信頼関係を築くまで~

「5,635」・・・

2019 年 4 月 1 日~2020 年 3 月 31 日のうちに動物愛護センター各所で殺処分された犬の頭数です。

年々頭数は減ってきているものの、人間の勝手な都合で殺処分される犬はまだ多くいます。この数字を 0 にすべく、センターから犬を引き取り、新しいペアレントを見つけるために日々奮闘している動物保護団体の皆様。そして、ペットショップで犬 を見つけるのではなく、保護犬を迎え入れるという選択をされる方で犬の命を繋いでいます。

私たちはその現状を知るべく、保護犬を家族に迎えられている渋谷弘美さんと亜希さんにお話を伺いました。ワンちゃんと暮らすことの“素晴らしさ”と“伴う責任”というテーマに基づき、2 回にわたり、ご紹介させて頂きます。 

初回記事のトピックスはこちらです▼

・保護犬を迎えるようになったきっかけや保護犬との暮らし、その良さ

・保護犬との信頼関係の築き方などのお考えや想い

・個人で保護犬をサポートするには何をすればいいのか

保護犬を迎えることに関心ある方はもちろん。犬との暮らしに関心ある方にも参考になるお話でした。是非ご覧ください。

(*本内容はあくまでも一家族のお話です。)

「他の子犬となら交換できます」という衝撃の言葉

現在19 歳半のジャックラッセルテリアのわん太はペットショップで購入した犬です。今考えると未熟な話ですが、当時私達はわん太を衝動買いしてしまいました。わん太は家に来てすぐに吐血。“犬パルボウイルス”に感染していました。犬パルボウイルスとは、非常に感染力が強く、また、子犬がかかった場合、致死率が90%とも言われています。このことをわん太を購入したペットショップに伝えると「返金はできませんが、他の犬との交換はできます」と言われました。

「交換」。
わん太は物ではない。ペットショップで働いている人は無類の犬好きだと思っていた私にとって、この一言は生体売買の現状を知る大きなきっかけとなりました。そして、保護犬を迎えるという選択肢を知ったのも、わん太との出会いのおかげです。

わん太が家族になって1年ちょっと。母親が仕事先のスリランカで野犬を保護し、その子を日本で飼うことに。蘭花と過ごせたのは10年間。亡くなった時は初めて「ペットロス」というものを経験しました。

「もう次に犬を飼うことは絶対にない」、と思っていたのですが、近所で活動する保護団体の存在を知り、意識が変わってきました。「蘭花は戻ってこないけど、命をつなぐ事はできる」と。出向いたKANAGAWA DOG PROTECTIONさんの譲渡会には会場の敷地で大きな穴を掘っている犬がいました。その迫力に魅せられ彼女の周りにはギャラリーが集まっていました。

ピナは元々猟犬のため、山で捕獲されたそうです。猟師さんが放棄したのか、狩りの途中で 迷子になったかは分かりませんが、探されずにいたということは要らなくなったのでしょ う。猟期は期間が定められています。つまり、オフシーズンになると猟犬は必要なくなり、 食事代などもかかるため、放棄を選択される方も中にはいるようです。

ピナを迎えた後は、シニア犬の引き取り手がなかなか見つからないという現実を知り、 真之助(12)、ハッピー(14)、寅之助(15)、リー君(17)、エマ(15)と老犬を迎えました。

渋谷様と一緒にインタビューに応じてくれたハッピーちゃん。
一緒に会話しているようです。

保護犬との信頼関係の築き方

「保護犬にはきっとかわいそうな過去がある」と多くの方が想像されると思いますが、それは事実です。かといって、過去のことを保護団体の方々に聞いても仕方ないと思っています。犬は“今を生きている動物”。過去にこだわるのではなく、家族になってからは「良い経験を上書き保存」してあげる。「かわいそう」はもう終わったことですから。

信頼関係の築き方なのですが、やはり一緒に過ごす時間が大切だと思います。それは、よしよしと抱っこして可愛がるのではなく、犬に家族関係や環境、家の中のルールを学んでもらう。そして、リードを持って一緒に歩く。私達はとにかくひたすら散歩します(笑)。「群での移動」が家族としての一体感を芽生えさせてくれると考えているので。中には、直ぐに慣れてくれる子もいれば時間がかかる子もいます。どんな子であろうと、焦らずに、十分な運動と食事、そして安心して休めるところを与えることが犬に伝わる「愛情」に変換されると感じています。

食事について。今は5頭いるのですが、一頭一頭献立が違います。老犬たちには、腸炎、肝臓疾患、腎臓病、心臓病、クッシング症候群、免疫疾患、癌、歯がない、目が見えない、耳が聞こえない、関節炎、気管虚脱、白内障、パテラ、皮膚病、認知症の子など様々。私は基本的にドライフードは必ず使うのですが、一頭一頭のニーズに合わせて手作りと混ぜてあげています。サプリ、乳酸菌や酵素パウダーなども積極的に使っています。手作りは大変、と思われる方も多いと思うのですが、ストイックになる必要はなく、お肉を焼くなり湯でたりしてドライにトッピングするだけでも犬は喜ぶのですよね。時間がある時はバランスの整った手作りに挑戦してみるのも楽しいかもしれません。最近は犬ごはんの本も沢山出版されています。

ドライフード選びも重要!同じものだと飽きがくることもあるので私は何種類かをブレンドしたりしています。もちろん今はHEKAグレインフリードッグフードも愛用しています。老犬たちにはサーモンは優しいですね。この様に、「愛犬の食事を考える気持ち」と「食事を楽しむ気持ち」の相乗効果で、自然と自分の食生活も豊かになっていくような気がします。因みに現在19歳5ヶ月のわん太はとても元気。毎朝、ゆっくりですが、1時間半は散歩出来るほど丈夫な身体です! 

保護犬を迎える良さ

 確かにパピーから迎えた方が躾(しつけ)が入りやすいのは事実です。また、ブリーダーさんから購入する場合、犬の血統を知ることによって、遺伝的な病気にかかりにくい子を選べると思います。

保護犬は、まずパピーは少なく、血統や病歴などはほとんどの場合わかりません。中には、障害を持って生まれた為、商品にならなかった子や病気を持っているから放棄された犬も。当然、老犬は病気が付き物です。

また、購入するよりフォスター(里親、又は保護犬を迎える行為)する方がハードルが高い。それぞれ団体さんの審査を通過しなくてはならないのです。最近は良くフォスターに求める条件が厳しすぎるという声を聞きます。

 それでも何故保護犬を選択するのか。
 私には3つ理由があります。

1つは命を繋ぎたい。
ペットロスで悲しみに明け暮れていたところ、亡くなった子は二度と戻ってこなくても保護犬を迎えることで「命をつなげることならできる」と思う様になりました。一頭の世話を通じて培った経験を次の子に活かすことが心の癒しになりました。

2つ目の理由は、「変わっていく姿を見届けられる喜び」です。
保護された犬が家庭犬になっていく姿はたまらなく愛おしい。表情がみるみると変わっていきます。これは自己満足の世界かもしれませんが、犬生を劇的に変えられるというのはやり甲斐があり、充実感、達成感、そして喜びに満ち溢れた体験です。

3つ目の理由は単純に「動物が好きだから」。
介護で睡眠不足になろうと、手が荒れようと、猟犬の散歩でクタクタになろうと、とにかく世話をしていると幸せな気持ちになります。

 子犬ではなく、成犬やシニアの保護犬は個性も出来上がっているので、団体さんに性格などを伺って、迎える側の生活に合った子をチョイスすることも可能です。また、雑種から純血種と色々いるので、予想していなかった犬種との出会いがあるかもしれません。うまく言えませんが、血統を選んでいるのではなく、その子を選ぶ、その子に選ばれる。

そして、保護犬を迎える大きなメリットは迎えたその日から、多くの仲間がいるということです。譲渡が決まる前から色々な人たちのサポートを受けてきた保護犬達。卒業は沢山の人たちが喜んでくれますし、困った時は保護犬と暮らす先輩たちにアドバイスをもらうこともできます。

個人で保護犬をサポートできることは?

 例え迎えられなくても、保護犬たちのためにできることは色々あると思います。

まずはお住いの地域で活動されている団体さんを調べてみてください。ホームページなどには里親募集中の犬猫を始め活動の内容、募集している支援物資、また寄付の振込先などが掲載されています。特に老犬や傷病犬のケアをしている団体さんは医療費がかかるので募金は助かると思います。また、オリジナルグッズなどを作っている団体さんもいるのでその辺りもチェックして頂きたいですね。

最近はSNSを通じて活動を発信している団体さんも多くいます。共感する内容であれば、いいね!をしたり記事を拡散することによって、保護活動の意義を広められると思います。

団体さんによってはボランティアを募集しているところも。譲渡会やイベントでのお手伝い、散歩やお掃除ボランティアなど身体を使ってサポートをしたい方は団体さんのサイトにその様な情報が掲載されているか調べてみてください。 

インタビュー後記:何気ない日常がペットとの信頼関係を築く

インタビュー記事 1 つ目は以上です。いかがでしたでしょうか。

保護犬との信頼関係を築くために、たくさんの努力をされたと思いますが、一緒に過ごす時 間が 1 番大切であることを伺い、ハッとしました。保護犬を迎え入れたら積極的に構って あげなければ!と勝手に思っていたからです。確かに、今一緒に暮らしている猫も、お互いの存在を確認することで、双方安心しているような・・・。私が勝手に思っているだけかもしれませんが、ペットペアレントの皆様もこのような感覚があるのではないでしょうか。ペ ットを迎え入れた日から、何気ない日常(実は特別な時間)を過ごしていくうちに自然と信頼関係が出来上がっていたことを渋谷様のお話から感じました。

また、保護犬や保護猫のサ ポートを何かしたいと思いつつも、何をしていいか分からなかったので、今回教えて頂いたことを参考に自分にできることから始めたいと思います。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。