【猫の飼い方完全マニュアル】愛猫と長く健康に暮らすための必須の知識
初めて猫と暮らし始めた方へ。
猫はとても素晴らしい動物で、猫と暮らすことは毎日が楽しい冒険です。
愛情を持って、生涯飼育をしてあげましょう。
ここでは、愛猫の食事や猫を迎え入れる前の準備から、猫と暮しているペアレントの方へさらに猫とより良い生活をするためのちょっとした獣医学的知識をご紹介します。
1.健康に暮らすための食事の選び方
キャットフードを購入する際、猫の栄養バランスをペアレントが管理できるように、キャットフードのラベルをしっかり読めるようにしましょう。猫は「真性肉食動物」に位置づけられており、必要とする栄養物質は植物材料からでは十分な供給が得られません。従って、猫における食の基本は畜肉や魚肉になり、人間と同じく、「タンパク質」「炭水化物」「脂肪」「ビタミン」「ミネラル」の5成分を体外からバランスよく、取り入れなければなりません。
■猫の栄養の基本
タンパク質は、消化管内でアミノ酸に分解吸収され、表皮表面・毛髪・他の体組織の自然な入れ替わりや成長・妊娠・授乳の期間、損傷組織の修復に不可欠な成分でエネルギー源です。猫のタンパク質要求量は他の動物に比較すると高く、人間の5~6倍のたんぱく質を必要としています。動物種で必須アミノ酸は異なり、猫は11種類のアミノ酸を体外から供給する必要があります。タウリンが欠乏すると、網膜が萎縮し、失明したり、拡張型心筋症のリスクを高めます。
【猫の必須アミノ酸】
- バリン
- ロイシン
- イソロイシン
- スレオニン
- メチオニン
- フェニルアラニン
- トリプトファン
- リジン
- ヒフチジン
- アルギニン
- タウリン(アミノ酸の定義でとは異なりますが、含硫アミノ酸から合成される分子)
炭水化物は、糖質と食物繊維が含まれています。糖質は、エネルギーの供給に優れています。食物繊維は可溶性繊維と不溶性繊維に分類され、可溶性繊維は便の水分を調整したり、満腹感や血糖値の上昇を抑え、不溶性繊維は腸管の運動を刺激して排便を促します。しかし、炭水化物の多い食事は、猫の糖尿病につながる可能性がありますので注意しましょう。
脂肪は最も濃縮された形態の食物エネルギーで、ホルモン合成やビタミンの運搬などにも関わっています。十分量の脂肪を猫自身で合成することができないため、猫の食事には脂肪を含んでいる必要があります。これらを必須脂肪酸といい、猫ではα-リノレン酸・リノール酸・アラキドン酸をさします。青魚に含まれる不飽和脂肪酸を過剰摂取すると皮下の脂肪が変性し、炎症やしこりが生じる黄色脂肪症となるリスクがあります。痛みを伴う場合もありますので、バランスよく摂取しましょう。
ビタミンは体内でビタミンKとCは合成できますが、ビタミンA、B1、B2、B6、Dなどは合成することができませんので、猫の食事に欠かせません。ビタミンは、脂溶性ビタミンと水溶性ビタミンの2つのグループに分けられます。水溶性ビタミン(ビタミンA、D、E、K)は過剰であれば尿中へ排出され、体内に貯蔵されないため、食事から頻繁に摂取する必要がありますが、脂溶性ビタミン(ビタミンB、C)は猫の体内に蓄積されるため、過剰摂取を避けるため、毎日の摂取はそれぼど必要ではありません。
ミネラルは骨格形成や体液バランスの維持(電解質)に作用しています。ミネラルは体内で合成できないため、食事から摂取する必要があります。過剰に摂取しても、不足しても健康障害が起こります。
猫は野生で暮らしてた時の名残で新鮮な生肉を食べることで水の必要量のほとんどを満たす身体になっているため、喉が渇きづらいと言われています。しかし、現代においてドライフードが主食になった猫は、水分不足になりやすく、健康上の問題を引き起こし、死に至るケースもあります。猫がいつ、どこでも飲水できるように、飲水場所を複数用意してあげましょう。
■キャットフードの種類
キャットフードには主に缶詰(ウェット)やドライフードなどの種類があります。
愛猫が十分な飲水をしない場合、ウェットフードは一般的に約 70 ~ 80% の水分を含んでおり、水分補給の良い源になります。水分含有量が多い缶詰製品を泌尿器や腎臓の疾患を患っている猫に与えることで、尿の結晶を排出しやすくし、結果として結晶形成のリスクを減らすだけでなく、腎臓病の脱水症状の緩和に繋がります。また、ウェットフードはカロリーが少なく、ダイエット中の猫の食事におすすめです。
しかし、ドライフードよりも一般的には容量の割にコストがかかります。
一方、ドライフードを与えられた猫は統計的にウェットフードを与えられた猫よりも歯の問題を起こしにくいと言われています。また、ウェットフードよりもドライフードの方がカロリーが高い傾向があるため、体重を増やす必要がある猫はドライフードの方がおすすめです。しかし、ドライフードのみの食事をしている猫は、ウェットフードを食べている猫よりも糖尿病や肥満になりやすいと言われています。
一般的には、バランスが良く、良質な原材料を使用しているものであれば、どちらのフードを選んでも猫の栄養要求を満たすことができますが、私たちは一般状態の良い猫には、ウェットフードとドライフードの両方を与えることをお勧めします。この混合給餌を行うことで、両方のメリットを受けることができるからです。朝はドライフード、夜はウェットフードを与えても良いですし、ドライフードとウェットフードを混ぜて与えても構いません。ただし、猫が健康的な体重を維持するために必要な栄養素を適切に摂取できるように、適切な量の管理を維持することが重要であることを覚えておいてください。
■食事の与え方
- 完全自由摂取方式:あらかじめ1日に必要量よりも多く食事を用意し、猫が1日のうちでいつでも自由に摂取できるようにした給餌方法。
- 時間制限給与法:1日に数回、給餌時間を決めて食事を摂取させる方法。
- 質的制限給与法:あらかじめ決めておいた食事を一定量与える方法。
などが定義されていますが、1日の必要量を2~3回に分けて与えるのが一般的です。1回の食事を食べきれない猫もいると思いますが、それは猫にとってごく自然なことです。元々猫は自らネズミを狩りして食事をとっていて、例えば、5㎏の猫は1日に7~8匹のネズミを捕食していました。ですから、猫のだらだら食いは一気に食べるというより、回数を分けて少量の食事をしていたという野生の名残です。しかし、この食べ方は、劣化したフードを食べることになったり、実際の食事量が把握できずペアレントを困らせるかもしれません。
■キャットフードラベルについて
ペットフードのラベルを読むことは、食品の品質を判断する方法です。記載されている成分は、製品に含まれる重量の割合に従って降順で並べられてます。
ペットフードは人間の消費目的の部分が取り除かれた家畜の副産物を使用している場合があります。ラベルで副産物であるかを確認するのは難しいですが、「肉」ではなく、「鶏肉」「七面鳥」「羊肉」「牛肉」などの具体的な動物種の名前が記載されているフードを選びましょう。
また、愛猫の食物アレルギーも確認しましょう。アレルギー疾患の場合は、成分ラベルをしっかり確認し、もし心配であればかかりつけの獣医師に相談してください。
以下、避けるべき成分をご紹介します。
- トウモロコシと小麦グルテン
- BHA、BHT、エトキシキンなどの人工防腐剤
- 食品染料
2.猫と暮らす前に準備しておくグッズ
猫を迎え入れる前に、必要なペット用品を事前に準備しておきましょう。
- トイレ
隠れて排泄をしたい猫もいれば、オープンで広いトイレで排泄したい猫もいます。最初は、カバーが取り外しできるトイレを購入して、愛猫の好みを見つけましょう。
- 猫砂
猫砂には非凝集と凝集のものがあり、原料もさまざまです。猫砂に関しても猫の好みがありますが、第一に安全な猫砂を選びましょう。
- フードボウル
食事用と飲水用を用意しましょう。陶器やステンレス製、セラミック製が最適です。プラスチック製の食器は、食品の細かな粒子や匂いが付着してしまう可能性があるので猫は好みません。
- キャリーケース
ペットショップやブリーダーからペアレントの家に迎え入れるときや動物病院への通院に必要不可欠です。万が一の災害時にもキャリーを持っているとスムーズに避難できますので、必ず1匹に1つは準備しましょう。
- ベッド
愛猫専用のベッドを用意し、落ち着ける場所を作ってあげましょう。
- おもちゃ
猫は遊ぶのが大好きです!たくさん遊んであげましょう。誤食を防ぐため、監視下で遊ばせるようにし、遊び終わったら、猫が手の届かない場所に片づけましょう。
- 爪とぎ
家具を引っ掻かないようにするために、爪とぎを用意してあげましょう。
- 爪切り
子猫のうちから爪切りに慣らしておきましょう。ライフスタイルにも寄りますが、最低月1回は爪を切ってあげましょう。爪が伸びすぎると、巻き爪となり肉球に刺さり、傷が膿んでしまうこともあります。爪切りのやり方が分からない場合は、かかりつけの獣医師に教えてもらうこともできますし、定期的に動物病院へ通院し、爪切りをお願いしましょう。
- 首輪
万が一、愛猫が迷子になった場合に重要な役割を果たします。
- シャンプー
猫用シャンプーを選びましょう。一般的に猫は頻繁にシャンプーする必要はありませんが、汚れてしまった時に対処できるよう準備しておきましょう。自宅でシャンプーするのが難しい場合は、トリミングサロンや動物病院でも行なっています。
- ブラシ
抜け毛を減らすために、定期的にブラッシングしてあげましょう。また、出来てしまった毛玉を放置すると、皮膚が炎症を起こしてしまう場合がありますので気を付けましょう。
3.ワクチン接種や寄生虫予防について
■ワクチン接種
ワクチン接種と寄生虫予防はペアレントにとっても、愛猫にとっても重要です。猫にワクチンを接種することは、健康で長生きすることにつながります。猫の予防接種プロトコールは、一般的に1年に1回ですが、年齢や病歴、環境、ライフスタイル、ワクチンの種類によって異なりますので、ワクチン接種は獣医師と相談して行いましょう。そうすることで、猫の個々のニーズを満たすように調整することができます。
ワクチンはコアワクチン(推奨)とノンコアワクチン(状況に応じて選択)に分けられています。
【主なコアワクチンの対象】
- 猫汎白血球減少症(猫のパルボウイルス感染症)
- 猫ウイルス性鼻気管炎
- 猫カリシウイルス感染症
【主なノンコアワクチンの対象】
- 猫白血病ウイルス感染症
- 猫免疫不全ウイルス感染症(猫エイズ)
- 猫クラミジア感染症
猫カリシウイルス感染症と猫ウイルス性鼻気管炎は、猫の上気道感染症に一般的に関与するウイルスです。猫のジステンパーと呼ばれる猫汎白血球減少症は、感染した猫、特に若い猫に致命的であるパルボウイルスです。
猫白血病ウイルス感染症は猫の免疫系を損ない、ある種の癌を引き起こすレトロウイルスです。猫の免疫不全ウイルス感染症として知られている猫エイズは、人間のHIVウイルスに似ており、免疫系の細胞を攻撃し、猫後天性免疫不全症候群(FAIDS)を引き起こします。猫クラミジア感染症は、猫の結膜の炎症、鼻炎および呼吸器系の問題を主に引き起こします。
ワクチン接種は人間同様に副作用を引き起こす場合がありますので、愛猫の体調が良い、1日中様子を確認してあげられる日の午前中に接種することをお勧めします。難しければ、獣医師に相談しましょう。
■寄生虫予防
猫の寄生虫は、外部寄生虫と内部寄生虫があります。
- 内部寄生虫
体内に寄生する虫で、回虫・鉤虫・鞭虫などの線虫類、瓜実条虫などの条虫類、血管内に寄生するフィラリアがあります。これらが寄生すると、下痢や血便、腹痛、貧血、発育不良、食べても太らないなどの症状を示すことがあります。排便時に虫を目視できることもありますので、猫の排泄物は日頃からチェックしましょう。万が一、虫を見つけた際は素手では絶対に触れず、手袋を使用してください。
- 外部寄生虫
ノミ・マダニ・疥癬などの身体の外部から皮膚に付着し、寄生する虫です。これらが寄生すると皮膚のかゆみや炎症を引き起こします。猫も人もSFTSウイルスを保有しているマダニに噛まれると、最悪の場合死を伴う重症熱性血小板減少症候群を稀に発症することがありますので、予防をしっかりしましょう。
予防薬は用途や商品の種類によって使用方法が異なりますが、一般的に1か月に1回の投薬が必要になります。ペットショップやスーパーマーケットで購入できるものもありますが、効果が低いことが多いため、かかりつけの獣医師に相談し、愛猫に合ったお薬を動物病院で処方してもらうことをお勧めします。