【獣医師監修】愛犬愛猫のための医学~犬の予防~

予防は、ワンちゃんと暮らす基本のひとつ。

愛犬の健康を守ることはもちろん、人や他の犬にも感染する病気・寄生虫もいるので、ペアレント自身やお友達ワンちゃんを守るためにも必要です。
また、適切な予防をすることで、ワンちゃんとの行動範囲や生活環境が広がり、ドッグライフをより楽しむことができます。

「この予防は何に効くのか?」「感染するとどうなるのか?」を理解した上で予防の年間スケジュールを把握し、適切な予防を愛犬にしてあげるようにしましょう。
 

犬の予防年間スケジュール


まずは全体的な年間スケジュールを把握しましょう。

ワンちゃんの予防項目は「狂犬病ワクチン」「フィラリア予防」「ノミ・ダニ予防」「混合ワクチン」です。以下の図はこれらの予防の年間スケジュールを表しています。
中には、国で定められた義務の予防(狂犬病ワクチン)もあります。

加えて、最低年1回(シニア期は年2回)の健康診断をすると、病気の早期発見にも繋がりますのでおすすめです。

それでは、次にそれぞれの予防項目を学んでいきましょう▼
 

狂犬病ワクチン(義務):年1回

生後90日以上の犬は、狂犬病予防法に基づき、1年に1回の狂犬病予防注射を受けて国に登録するという決まり事があります。

狂犬病は、発症するとほぼ100%死亡するという恐ろしい病気。WHOの推計では年間約5万5千人の人が狂犬病で亡くなっています。
近年日本では発生はない狂犬病ですが、お隣の国中国、インドなどの海外ではまだ発症事例はあり、日本においても予防をしっかりと行なわなければなりません。

ワンちゃんを迎えた際は、この狂犬病ワクチンを接種することで、鑑札が交付され、国に登録されます。
一度登録すると、毎年接種時期頃にハガキが届くので、ワクチン接種する際には必ず動物病院または接種会場へ持って行きましょう。
接種後は証明として、狂犬病予防注射済票が発行されます。

フィラリア予防:通年(4月~12月頃)

フィラリア症は、蚊に刺される→心臓に寄生するフィラリア(犬糸状虫)という寄生虫が犬の血管に入り、成長、増殖を繰り返す。→血液の流れが悪くなる→全身に様々な症状を引き起こす恐ろしい病気です。一度感染すると駆虫が大変であり、多数の成虫が寄生している場合、それらが心臓につながる大きな血管を塞ぎ、血尿や貧血、呼吸困難などをともなう急性症状が現れ、急死する症例もあります。ワンちゃんと暮らされている方は、是非とも予防することをお勧めします。

4月~5月頃にワンちゃんにフィラリアが寄生していないかの検査を行い、寄生していないことを確認します。
4月~12月上旬まで、毎月内服薬もしくは注射で予防。その他にも、背中に垂らすスポットタイプの薬もあります。
予防時期は地域によって異なるので、かかりつけの獣医師さんと相談しましょう。
 

ノミ・ダニ予防:通年(4月~12月頃)

ワンちゃんは、外へお散歩に行くことで、ノミやマダニなどの外部寄生虫に感染する機会が多いです。
ノミやマダニは吸血するだけでなく、伝染病や寄生虫を運んできたりします。
中には人間に感染する人獣共通感染症もありますので、是非予防をしておいたほうがいいでしょう。
そして、ワンちゃんの身体に外部寄生虫を見つけた場合は、すぐに病院で診察を受けるようにしましょう。


基本的に4月から12月まで、毎月内服薬や滴下する薬で予防します。
ノミ・ダニ予防も地域や生活環境によって予防期間が異なりますので、かかりつけの獣医さんと相談しましょう。
フィラリア予防とノミ・マダニ予防が一緒にできるお薬もあります。
 

混合ワクチン:年1回

混合ワクチンとは、いくつかのウイルスと細菌に対するワクチンが、ひとつに混合されたものです。

ワクチン接種により、病気に対しての抵抗力(免疫力)をつけて、これらの病気を予防します。
混合ワクチンにはいくつか種類があり、年齢や住んでいる地域、生活環境によって適切なワクチンは異なりますので、かかりつけの獣医さんとで相談してどのワクチンを打つか決めましょう。

獣医師原先生のQ&A

Q.ワクチン接種後に気をつけることはありますか?

ワクチンを打ってから24-48時間程度は元気がなくなる、食欲が落ちる、吐くなどのワクチンによる副反応が出ることがあります。
該当する期間はなるべく注意深く様子を見てあげるようにしましょう。

愛犬の身体にノミ・マダニが付いていました。すぐに取り除いてもいいでしょうか?
ノミやマダニは皮膚深くまでしっかりと噛み付いているので、無理に取ろうとするとワンちゃんの皮膚にノミダニの顎がちぎれて残ってしまうことがあります。
なので、見つけたらなるべくその場で取らずに病院で取り除いてもらうようにしましょう。
 

Q.愛犬は外に出ることがほとんどなく、室内飼育です。山や川など自然とも近くなく、予防をする必要性はありますか?

狂犬病ワクチンは法律で定められているので、飼育者は健康上の理由がない限り接種させることが義務になります。

混合ワクチンもドッグランやトリミング、散歩など他の犬が集まっていたり、触れ合う場所に行く可能性が少しでもあるなら絶対に接種すべきでしょう。
フィラリアも屋外にでないならいいのでは?と考えてしまいがちですが、屋内でも蚊はもちろんいます。確実に毎年予防をしていくようにしましょう。