今回のテーマ
猫の顎ニキビ
症状/原因
猫ちゃんに比較的よく見られる皮膚のトラブルで、アゴ周りの毛穴につまった皮脂が黒ずんでできた粒状のできもののことを指します。
「顎ニキビ」とも呼ばれていますが、専門的には、「ざ瘡(ざそう)」や「アクネ」といいます。
具体的な症状としては、黒いブツブツができる初期症状から、皮膚が膿んでただれてくるような重症になる場合もあります。
初期症状では、本人もあまり気にしない事が多いですが、症状が進行してしまうと痒みが出て、患部をしきりに掻き始めます。
さらに、細菌などが毛穴に入って感染してしまった場合には、赤く腫れあがり、痒みや痛みを感じ、あごをなにかしらの物にこすりつけるようになったり、後ろ足で搔くなど患部を気にする行動が目立つようになります。
そのまま治療せず放置しておくと、さらに感染が広がり、皮膚が膿んでただれたり、出血を起こすまで搔きむしったりと、強い痛みを伴うようになってしまいます。
猫の顎ニキビの原因は、はっきりとはわかっていませんが、人間のニキビと同じように、毛穴に皮脂が溜まり、そこに細菌感染が起こることで発症すると考えられています。
軽度なものでしたら、ご自宅でのケアで治る場合もありますが、治りにくかったり、繰り返して発症する場合は他の原因(アトピー症やニキビダニ症)が考えられますので、動物病院を受診しましょう。
予防
予防としては、猫ニキビができやすいアゴ部分を清潔に保つことです。
日頃から皮膚の状態をチェックし、以下の要因を取り除きましょう。
①猫ちゃんが使う物に繁殖した雑菌
毎日フードや水を入れる食器は、食べ残しや猫ちゃんの唾液などで雑菌が繁殖しやすくなっています。
雑菌が繁殖した食器を使うことで、猫ちゃんのアゴに雑菌が付き、炎症を引き起こします。
常に清潔な状態を保てるように、頻繁に洗ってあらうようにしたり、セラミック(陶器)製やガラスなどの傷が付きにくい素材の食器を積極的に使用するなど、雑菌の繁殖を防ぐようにしましょう。
また、猫ちゃんがいつも使っているベッドや敷物などに汚れがついて雑菌が繁殖している可能性がありますので、こまめに洗濯や清潔を保つことも大切です。
②食器素材のアレルギー
猫ちゃんが食器の素材にアレルギーをもっているのが原因となり、猫ニキビができてしまうことがあります。
雑菌が繁殖しにくい食器素材として挙げた上記2種は、アレルギーも生じにくいのでおすすめです。
③ホルモンバランスの乱れ
人間と同じく、過度なストレスはホルモンバランスを乱し、免疫力を低下させるため、細菌感染しやすくなります。
ストレスの原因を考え、落ち着いて過ごせる場所や遊ぶ時間をつくるなど、出来ることからしてみましょう。
また、避妊・去勢手術のあとに、ホルモンバランスの乱れが生じて猫ニキビができることもあります。
④グルーミング不足
猫ちゃんはグルーミング(自分の身体を舐めてきれいに)する動物ですが、アゴの部分は直接舐めることができないため、皮脂や汚れが残りやすい部位なので、食べもののカスやよだれが付いたままになりがち。
汚れていることに気付いたら、お湯で濡らしたタオルやコットンで軽く拭き取ってあげましょう。
⑤お食事が合わない
いつも食べているキャットフードやおやつが猫ちゃんに合っていないことで、猫ニキビができることもあります。
猫ニキビが繰り返してしまう場合はフードの切り替えを検討してみましょう。
検査/診断方法
身体検査:視診/触診/細菌検査
治療
本人の自覚症状が無い場合は、拭きとるなどのアゴ周辺の清潔を保つケアで経過をみます。
痒みや皮膚に脱毛・赤みが見られる場合は、外用薬や薬用シャンプーなどの治療や程度によっては抗生剤の内服薬を処方されることもあります。
獣医師スタッフ 原のQ&A
Q.顎ニキビは他の猫やペアレントに感染しますか?
顎ニキビは記事の内容のように、猫自身からの皮脂の分泌が原因です。従って基本的には他の猫や人に対して移るものではありません。
ただ、清潔でないお皿を複数の猫ちゃんが共同で使っている場合などは、増えた雑菌がお皿を介して症状がでている猫ちゃん以外にも移ることは考えられるので、多頭飼育の場合、環境の美化には特に気をつけておくようにしましょう。